中弁連の意見

広島弁護士会

接見禁止に対する原則全件(準)抗告運動についての提言

 

 中国地方弁護士会連合会会員は、被拘禁者に接見等禁止決定が付されている事案全件について、準抗告権や抗告権を行使することを検討し、裁判所(官)に対し、積極的に接見等禁止決定を取り消すよう求めて行くことを提言する。

提案理由

  1.  近時、特に、当連合会が所在する広島高等裁判所管内においては、勾留に対し接見等禁止決定(刑事訴訟法81条)の付される割合が、1985年(昭和60年)から2003年(平成15年)までの約20年間の間に、19%から46%へと、約2.5倍の異常な割合で急増している。この間、全国平均も24%から38%へと1.5倍程度に増加してはいるが、広島高等裁判所管内の接見禁止率及びその増加率は、いずれも全国的にも突出している。しかも、1998年(平成10年)ころまでは全国平均を下回っていたのが(1998年(平成10年)は全国平均が30%に到達するが、広島高等裁判所管内は26%)、その後、1999年(平成11年)28%、2000年(平成12年)31%、2001年(平成13年)39%(この年から毎年広島高裁管内が全国平均を上回るようになる)、2002年(平成14年)45%、2003年(平成15年)46%と、ここ数年間で異常に高くなってきている。
     一旦、接見等が禁止される決定がなされると、公訴提起後も、更には、第1回公判後も、引き続き接見等禁止決定がなされる傾向があり、特に、否認事件においてその傾向が顕著となっている。このような事態は、検察官が安易に接見等の禁止を請求していることと、裁判所(官)がこれに対する適正な司法審査を行っていないためではないかとの疑念をぬぐい去れない。
     
  2.  そもそも、刑事訴訟法81条による接見等禁止は、被拘禁者の身体拘束に加え、外部との連絡を遮断し孤立感を煽るなど、被拘禁者に心理的圧迫を加え、防御権の行使に重大な影響を与えるもので、これに保釈が容易に認められない実情とも相まって、まさに被拘禁者に対し精神的拷問を加えるにも等しいものであり、到底このような事態を看過することは出来ない。
     また、本年2月、当連合会内の広島弁護士会において、本議題と同趣旨の宣言を採択し、その後同会会員らにおいて接見等禁止決定に対し積極的に準抗告、抗告を申し立てるなどの活動をした結果、接見等禁止決定を取り消したり、接見等の禁止決定について、接見の必要性が高く、かつ、弊害の少ない親族などの一定の者には接見を認め一部解除決定が出された事例が、多数報告されている。中には、共犯者多数とされている案件においても、「罪証隠滅の防止は身体拘束で十分担保されている」との理由で接見等禁止決定が取り消された例や、これまでであれば接見等禁止決定が当然のように付されていた共犯事件につきそもそも接見等禁止決定がなされない事案も現れているとの報告もなされている。
     このような状況に鑑みると、前述したような広島高等裁判所管内における接見等禁止の異常な増加傾向の背景には、刑事訴訟法の趣旨からは本来接見等禁止がなされるべきでない案件にまで安易に接見等禁止がなされていた実情があったこと、及び、これに対し弁護人において積極的に準抗告等の申立をすることが、適正な司法審査を促し、接見等禁止を本来あるべき必要最小限度にまで減退させる効果があることが、それぞれ実証された。
     
  3.  以上のような実情及び状況変化等を受け止め、このような意義ある活動を単位会レベルからより広範な活動へと展開するため、中国地方弁護士会連合会会員は、接見等禁止決定が付された事案全件について準抗告権や抗告権を行使することを検討し、積極的に接見等禁止決定の取消を求めて行くことを提言するものである。